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石原信雄の世相診断 Vol.1

元気を出そう

今、いちばん気掛かりなのは、日本人が自信喪失に陥っているのではないか、ということである。高度経済成長のころは、自信過剰気味のところがあったが、バブル崩壊後は、一転、自信をなくしてしまったようにみえる。将来に対しても悲観的になっている。憂うべき精神状態にあるのではないかと思う。

原因の一つは経済の停滞にある。たしかに失業率が高く、個人消費も思うように伸びない。失業が増えるのは、一つには、日本のメーカーが低廉な労働コストを求めて、生産拠点を東南アジアに移す傾向にあることが背景にある。

日本としては、そうした流れとは異なる産業、たとえば現在の高賃金でも採算のとれる、国際競争力をもったハイテク産業を起こすことが大事であると思う。賃金を下げるというのでは国民は納得しない。国際競争力を備えたハイテク産業で雇用を創出していく努力をすべきだと思う。

一方、国内消費が伸びないのは国民が将来に希望をもてないからだといわれているが、必ずしもそうとばかりは言えない。物の点ではもう十分豊かになっている、一応の生活水準は維持できているわけだから。いうなれば、物余り現象である。個人消費については、それほど悲観的になることはない。

今、個人消費に期待がもてる分野は住宅である。とりあえず住める住宅はあっても、居住水準は低い。欧米に比べて狭く、現在の住環境に満足している人は少ないのではないか。こうなったのも、地価が高かったからである。しかし現在はかなり下がってきている。

住宅に関しては、国民のニーズは高いと見るべきだ。税制上の優遇措置を講ずるなど、居住水準を引き上げる努力をすべきではないか。ここに、個人消費を伸ばせる余地がある。住宅に関しては、まだまだ根強い需要があるはずである。

高賃金でもやっていける国際競争力をもったハイテク産業の育成と住宅に対する需要の拡大を図ること-この二つの処方せんを実践することが、現在の停滞した経済を再生し、日本人をして自信を回復させる道であると思う。

2001(平成13)年5月掲載

石原信雄の写真 石原 信雄

1926年生まれ。
52年、東京大学法学部卒業後、地方自治庁(現総務省)入庁。82年財政局長、84年事務次官、87年(~95年)内閣官房副長官(竹下、宇野、海部、宮澤、細川、羽田、村山の各内閣)を務める。
現在、公益社団法人日本広報協会会長、一般財団法人地方自治研究機構会長。

 

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