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広がり続ける「広報力」空間~広報コミュニケーションの近未来を探る Vol.12

広報・温故知新~
30年前のメッセージをもう一度

本記事は、月刊「広報」連載「広がり続ける広報力空間~広報コミュニケーションの近未来を探る」から一部を抜粋したものです。

  • 長澤忠徳
    武蔵野美術大学 学長/カルチュラル・エンジニア

「感性が重視される時代」の行政広報

「『感性』の時代に“一般大衆”はいない」――これは、1984(昭和59)年9月に、私の郷里、富山県富山市で開催された第21回全国広報広聴研究大会で、私が講演の中で語った言葉である。

物があふれ、生活が豊かになると、人々の趣味や嗜好はより多様になる。多様な人々が多様に生きる時代に、従来通用していた“一般大衆”という広報対象のくくり方はもう通用しなくなっている。個性化が進んだ社会において、地域住民すべてを相手にしなければならない行政広報は、いったい、誰に何を伝えるべきなのか――。講演内容を載録した当時の『広報』を読み返してみて、今もなお、突きつけられている課題に、行政広報の難しさを改めて感じている。

 

高齢者には高齢者の 若者には若者の広報の仕組みを

情報にはおよそ3種類ある。一つは、本のように「綴じる情報」、二つ目は、更新して常に新しいものに「差し替わっていく情報」、三つ目が、いま聞くことに価値がある「ライブな情報」だ。

自治体広報紙は思い切って、高齢者仕様にしてはどうかというのが、私の持論である。広報紙は「いったん綴じた情報」だから、高齢者がじっくりと、自分のペースに合わせて読むのにもっともふさわしいツールだ。情報はどの人にとっても大事なのだが、それぞれに濃淡がある。今聞かないと意味がないライブな情報は、高齢者にとっては必要ないかもしれない。税金や年金、福祉サービスに関する情報は繰り返し伝えたいので、広報紙に親しんでいる高齢者にはうってつけである。

一方、スマホを片手に子育て中のお母さんには、今話題の子育て情報が気になるだろう。そんなときは、ブログやフェイスブック、投稿サイトで最新の話題を見つけてくるのが手っ取り早い。学生などの若者は、情報を受け取るというより、自ら発信するほうが向いているかもしれない。ネットやツールに詳しい大学生などは、情報を加工したり、まとめたりするのが得意だ。最近は自治体広報紙で、高校生や大学生が発信するケースも増えているという。……

 

※記事の全文は、月刊「広報」2016年10月号でお読みいただけます。

ながさわ・ただのり

1953年富山県生まれ。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒。英国王立芸術大学(RCA)大学院修了。81年帰国後事務所開設、デザイン開発等のディレクション、コンサルティング、プロデュースを行う。1999年武蔵野美術大学教授、2015年4月、武蔵野美術大学学長に就任。研究テーマは「デザイン情報論」「カルチュラル・エンジニアリング」。2016年7月、RCAより、日本人で初めてシニアフェローの称号を授与される。著書に、『インタンジブル・イラ』(サイマル出版会)、『広報紙面デザイン技法講座』(日本広報協会)、『デザイン/アート留学のすすめ』(監修:ビー・エヌ・エヌ新社)。

 

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