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Net de コラム Vol.26

防災広報に双方向情報伝達を含めた仕組みを

  • 安田 孝美
    名古屋大学・大学院教授

双方向性メディアには新たな防災情報提供の可能性がある

インターネット、携帯電話、デジタルテレビ放送など、現在では多くの新しいメディアが実社会で利活用されている。これらの活用により、近年の防災や災害に関する住民への自治体広報も変革の時期を迎えている。特にこれらのメディアがもつ「双方向性」の特徴は、自治体から住民への一方向性を中心とした従来の情報伝達形式の枠を越え、より多様性のある情報伝達を生み出す可能性をもつ。

我々の研究室では、多くの一般的な防災情報から各家庭や個人の状況に応じて必要な情報をカスタマイズ(個別化)して提供する方法の研究や、インターネットの地図上に、カードイメージとして避難所やイベント情報、画像や動画による情報を容易に提供・修正・閲覧が可能なシステムの開発など、双方向性の活用による新たな防災情報の提供に関する研究を行っている。また、実証実験を重ねることでより利便性の高い仕組みの構築を目指している。

 

参加型メディアの新たな仕組みが住民の防災意識を高める

これからの防災や災害に関する自治体広報の在り方も、住民・自治体間、あるいは住民同士など、各コミュニティー構成員間での双方向情報伝達を含めた仕組みを考えていかなくてはならない。その際重要なのは、広報の内容や対象者に合わせた各メディアにおける情報技術の選択や、地理的・時間的などの情報性質に合わせた見せ方の工夫である。また、提供者だけでなくシステムを管理する側にとっても効率の良い提供方法や運用形態を構築することも必須(ひっす)である。

一方、インターネットなどで双方向の情報のやりとりを想定した場合、情報の信頼性の確保や個人情報保護問題など負の要素の解決や、コストパフォーマンスの確保などができなければ現実的な手段と言えなくなる恐れもある。このように新しいメディアならではの課題も多いが、双方向性の活用による参加型の新たな仕組みが、住民の防災意識をより高めていくものと期待される。テレビやラジオ等の放送メディアが防災・災害情報の広報に優れている点として、即時性とともに日常において身近な存在であり、ほとんど毎日利用していることが重要である。インターネットや携帯電話、地上波デジタルテレビ放送等双方向性機能を有する新しいメディアを広報として利活用していくためには、この日常性をすべての住民にどのように確立していくのかも大切な視点である。

やすだたかみ

1959(昭和34)年生まれ。情報通信ネットワークにおける新技術の調査研究と、それらがもたらす新しい社会の在り方についての調査研究を行っている。

 

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