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広がり続ける「広報力」空間~広報コミュニケーションの近未来を探る Vol.1

「コミュニケーションで地域経営」の時代へ

本記事は、月刊「広報」連載「広がり続ける広報力空間~広報コミュニケーションの近未来を探る」から一部を抜粋したものです。

  • 澤茂樹
    株式会社澤茂樹事務所/広報コンサルタント

ふたたび動き出した自治体広報

近年、自治体広報が大きく進化し始めている。その流れを強く後押ししているのは、ここしばらくの「地域ブランドづくり」「シティプロモーション」に始まり、今日の「地方創生」に至る"地域活力向上"の動きであろう。ある意味、地域も生き残りをかけた真剣勝負の段階を迎えてきていることを示している。

一方、東日本大震災以降、全国各地での連続的火山噴火や、集中豪雨による河川氾濫の被害など、自然災害の多発に対する未然の広報、リスク発生時の広報、復興のための広報が一層求められてきていることも背景の一つだ。今般は、在日外国人への広報のあり方も、大きな課題となってきている。

そして、何よりもICT(情報通信技術)の飛躍的進化による「メディアの多様化・多層化」も、自治体広報のあり方を根幹から揺るがす要因となってきている。あまりの変化の激しさに対応しきれていない現状がある。とりわけ、個々人を発信源とし、個々人を媒介するする情報伝播の広がりの多様化・多層化にどう対処していくべきか、模索・実験の段階が今も続いている。

 

「地域価値の経営」という大命題へ

しかし、こうした昨今の具体的な動きの以前から、自治体広報は大きな曲がり角に直面していた。その根底となる要因は、一つに「自治体行政」から「地域経営」への転換という課題意識であり、いま一つが地元企業・NPO団体も含む「住民・市民協働」を必然とする基本認識である。もとより、その背景には、地方財政逼迫からの自立、地域資源の有効活用、"ハコづくりからコトづくりへ"といった時代状況からの要請がある。

とりわけ、「地域経営」と言った途端に、企業と同様、経営目標の設定から始まり、経営資源の調達・活用、経営戦略の推進、経営成果の指標化、それを具現化するための経営計画と、何よりも経営感覚と手法(マネジメント力)が求められてくる。さらには、重点政策(ビジョン)の選択と集中、政策課題・資源の統合による効果と効率のバランス経営、協働推進のための関係性構築といった課題も浮上してくる。

その際のキーコンセプトは「価値」であると考える。大括りに言えば、「地域価値の経営」という大命題への取り組みであり、そのための意識改革、体制革新である。言い換えれば、その地域ならではの「価値テーマ」を明確にして、それをベースにした「価値をマネジメントする仕組み」「価値を創出・増殖する仕組み」「価値をマーケティングする仕組み」「価値を情報発信する仕組み」を、行政内部および市民協働体制の中に構築していくことである。「地域ブランドづくり」や「シティプロモーション」は、まさに、こうしたフレームの中でこそ成立し得る。

こうした「地域経営」にあって、その基軸となるのは、まさに「コミュニケーション」である……

※記事の全文は、月刊「広報」2015年11月号でお読みいただけます。

さわ・しげき

地域活性化、行政広報のプランニングおよびプロデュースを数多く担当。2006年コンサルティング会社を設立。企業経営、地域経営、行政経営の領域において、コミュニケーション(広報広聴)を基軸とした問題解決を幅広く展開している。専門は、地域活性化、企業・自治体等のCI、コミュニケーション面からみた文化戦略の企画・立案など。日本広報協会・広報アドバイザー、全国広報コンクール広報企画部門審査委員などを務める。著書に『広報力が地域を変える!』(日本地域社会研究所)

 

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