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広がり続ける「広報力」空間~広報コミュニケーションの近未来を探る Vol.5

新しい時代に広報・広聴は何ができるか
~社会を拓く「広報」 真意をくみ取る「広聴」が求められる

本記事は、月刊「広報」連載「広がり続ける広報力空間~広報コミュニケーションの近未来を探る」から一部を抜粋したものです。

「新しい公共」の時代と広報

今必要なのは、「まちづくり型広報」とも言うべき着眼点である。自治体広報の前提として、「どんなまちづくりをめざすのか」が広報の原点になければならない。わがまちを、これからどんな地域社会に拓いていくべきなのか。そのためには、どんな広報が必要かと考えるのである。「福祉を大切にするまち」をめざすなら、商店街問題・観光振興・都市基盤整備など、あらゆる政策について、「福祉」という切り口・視点で編集することも可能である。

まちづくりには「めざすもの」と「活かすもの」がある。広報は、「活かすもの」であって、「めざすもの」ではない。それだけに、広報が創る社会というものを考えずに、一部の広報人がいきなり“広報技術”に飛びつく昨今の風潮はいかがなものであろうか。

これからの地域社会が直面しつつある最大のテーマが「超少子高齢化」である。少子高齢化社会は、自分のことは自分でできる「自助」のパワーが次第に低下していく社会である。それを誰がサポートしていくのか。一人一人のニーズは、従来の行政からは予測できないほど多様化している。何もかもが行政の守備範囲ではない。これからは「共助」、つまり地域のさまざまな主体がそれぞれの持ち味を生かしてそれぞれに取り組み、みんなで地域社会を支えていく「新しい公共」の時代である。

 

人とまちをつなぐ広報

そのように考えた時、これから必要な広報とはどのようなものであるべきだろうか。

埼玉県・JR川口駅前にある総合文化センター「リリア」のタワー棟(約100メートル)の屋根は、「人」という文字をデザインしたものである。川口市の地域資源といえば「鋳物と植木」と相場が決まっているが、これまで、そしてこれからも長年にわたって鋳物と植木を育て・つないでいく市民こそが川口市の真の財産ではないかという発想からデザインされた。風景にも事業にも“意味”がある。それを広報することによって、住民はわがまちを知り・愛着を持ち・人とまちがつながっていく。そのような広報であってほしい。

例えば公共施設の建設にあたり、着工と完成のはじめと終わりだけを広報するのが「キセル広報」なのに対して、それはなぜ何のための施設なのか、その建設にあたってどれだけの人間ドラマがあったのか、それを建設することによってどんなに明るい未来が描けるか。住民の期待と希望を盛り上げるように段階的に広報していくのが「プロセス広報」である。

このような広報によって、人々の心にわがまちへの関心と愛着が生まれ、それが「協働のまちづくり~新しい公共の社会」へと発展していくのである。

 

※記事の全文は、月刊「広報」2016年3月号でお読みいただけます。

うらの・ひでかず

1969年埼玉県川口市役所に入庁。研修、人事、議会、広報、企画などを担当する。71年ネパール王国訪問。東洋的なまちづくりの手法を知り、以来、全国各地の地域振興の取り組みを訪問調査する。85~88年(財)埼玉総合研究機構へ出向し、主任研究員となる。92年川口市役所を退職し、有限会社あしコミュニティ研究所設立。自治体の計画策定、まちづくりの調査研究・アドバイザー、職員研修講師として活動する。日本広報協会広報アドバイザー。88~2009年国土交通省地域振興アドバイザー。著書に、『まちづくりの主人公は誰だ』『自治体人材育成の着眼点』(いずれも共著、公人の友社)、『まちを元気にする!自治体政策のつくり方 地域を変革する8つの方法』(学陽書房)がある。

 

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