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戦略かイメージか~みちのく戦争の結末

  • 土橋 幸男
    PRコンサルタント

近鉄とオリックスの合併に端を発した新球団参入の「みちのく戦争」は、大方の予想通り「楽天」に決まった。

残念ながら選から漏れた「livedoor」には多くの同情が集まり、さながら「楽天」は悪者扱いである。週刊誌『AERA』が「東北楽天」に決まった直後、仙台市民100人に「楽天」と「livedoor」のどちらに来てほしいかを尋ねた。結果、79人が「livedoor」と答えている。これは決して判官贔屓(びいき)からではないであろう。なぜなら、9月末時点の宮城県知事への電子メールでも783通のうち、672通が「livedoor」歓迎の内容であったからである。

ではなぜ、こうまで嫌われた「楽天」が勝利したのか。極論ではあるが、私は広報に対する戦略性の有無を感じる。確かに「楽天」は「後出しジャンケン」の感は否めない。そのことが嫌われた原因でもある。しかし、戦略性に勝るものがあった。それは(1)相手(日本プロ野球組織・審査小委員会)が何を好み、何を嫌うかを研究していたこと。(2)信頼を得るための策(経営諮問委員会の設置)を施したこと。(3)提出書類(申請書)に外部評価を加味したこと。(4)みちのく詣(もうで)で見せた気配り。そして(5)コミュニケーション能力の高さである。一見知略に長(た)けた武将のようであるが、勝つための戦略と言えよう。

他方、「livedoor」の堀江社長である。自然体で飾ることなく、無手勝流。Tシャツ姿が良く似合い、競走馬の馬主。元水着キャンペンガールの恋人と表舞台に現れ、華やかに振る舞う。その姿からは金持ち坊っちゃんのイメージが漂う。最もこの点が人々から好かれる要因でもあったが。しかし、無手勝流なるがゆえに露呈した失点は、大きい。その代表がアダルトサイトの問題である。この話題が話し合われた第2回ヒアリング時の写真がスポーツ紙に掲載されていたが、うつむき加減で目をつむり、指で額を押す悩ましげな社長の顔があった。どう見てもピンチの感である。社長は正直に対応していたが、ストレート過ぎて、相手を納得させるには至らなかった。さらに、同社には民事訴訟とか刑事訴訟が継続中だといわれ、危機管理の欠如を露呈している。広報万能とまでは言わないが、少なくとも「livedoor」には広報不在を感じる。

イメージより戦略性に分があった観であるが、願わくは「東北楽天」が素晴らしい活躍で、好イメージを醸成されることを祈っている。

どばしゆきお

1935(昭和10)年生まれ。日本放送協会(NHK)、電通PRセンターを経て現職に。

 

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