コラム

トップページコラムNet de コラム > Vol.23 「NPO広報支援」こぼれ話

Net de コラム Vol.23

「NPO広報支援」こぼれ話

  • 安藤 直紀
    コピーライター

各分野のプロがアドバイザーに

数年前、ある自治体でNPO団体に対してどんな支援を欲しているかというアンケート調査を行ったところ、広報支援を求める声が圧倒的でした。そのニーズに応(こた)えるカタチで「広報支援事業」が実施されました。

「広報戦略」「プレゼンテーション」「文章表現」「ホームページ」「ビデオ制作」などについて、元新聞記者、元アナウンサー、現役の美術大学講師、Webのグラフィックデザイナー、コピーライターといったプロがエントリーのあったNPO団体を訪問。先方が欲する広報を支援しようというもの。例えばホームページの作成をご希望ならWebのグラフィックデザイナーが行き、会議や講演の進め方をご希望なら元アナウンサーが……といった具合です。私はコピーライターの立場で支援事業に参加。主に団体案内やニューズレターなどの作り方を担当。支援を希望する団体が予想以上に多かったので、実際に出かける前にそれらの団体に対して電話で聞き取り調査を行いました。

 

電話での聞き取り調査も一苦労

最初にお断りしておきますが、これはいわゆるネタではありません。ホントに経験したことです。その事業を委託されたNPOの事務所にそれぞれの分野のプロが集まり、支援を希望するNPO団体に電話をかけます。ホームページをもちたいというある団体に連絡をとったときのこと。そこは地域のお年寄りを対象に給食サービスを始めたばかりの主婦中心のNPOでした。

「ホームページの作成をご希望ですね。では機種とかOSとかパソコンの環境を教えていただけますか?」

「はあ。パソコン環境ね。ええ、北向きの部屋にありまして直射日光は当たりません」

「……」

歌や寸劇などで老人ホームへの慰問を行っているNPOがありました。会社や団体などを定年退職した元気な中高年のグループです。「パソコンはあるが動かない」と言います。いろいろ訊(き)いて、OSはwindows95であることが分かりました。

「お手元に95のドライバーはありますでしょうか?」

「ええっと、マイナスならありますが」

「……」

 

切実に求められている広報支援

これらはほんの一例です。日ごろギョーカイのカタカナ人種と丁々発止とやり合っている身にとっては、新鮮な驚きでした。その受け答えに思わず絶句してしまったり、失礼ながら笑いがこみあげてきたりしました。しかし、各団体の大マジメな活動に触れ、切実に広報支援を求めている姿がよく分かりました。半年間にわたる支援事業の後、「パソコン環境」を描写してくれた団体はホームページを自前で作ることができるようになり、「マイナスドライバーならある」と言った団体はパソコンで会報誌を編集できるようになりました。また、広報支援事業の締めくくりとして「Before After」の作品展も開催。笑いと感動を呼ぶおもしろいものでした。いつか同様の機会があれば、また参加したいと思っています。

あんどうなおき

1951(昭和26)年生まれ。企業広報誌、PR誌、医療情報誌のほか、名古屋市発行の広報紙などの取材・原稿執筆、NPO団体への広報指導を行う。

 

ページトップへ