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大きく変わった仕事と家庭についての考え方

  • 河野 啓
    NHK放送文化研究所(研究・調査)主任研究員

意識の変化は世代だけでなく経年変化もみられる

30年前、「寿退社」、「育児退職」は当たり前の光景でした。NHKが5年おきに実施している「日本人の意識調査」がスタートしたのは、1973(昭和48)年ですが、その調査から、「結婚した女性が職業を持ち続けることについて」の考え方が時代と共に大きく変化しているのが分かります。
設問の選択肢は次の三つです。

  1. 結婚したら、家庭を守ることに専念したほうがよい<家庭専念>
  2. 結婚しても子どもができるまでは、職業を持っていたほうがよい<育児優先>
  3. 結婚して子どもが生まれても、できるだけ職業を持ち続けたほうがよい<両立>

<家庭専念><育児優先>は、30年前の調査当初は合わせて8割近くと多数でしたが、回を追うごとにともに減り続け、2003年では合わせて半数弱となりました。

変わって、「結婚して子どもが生まれても、できるだけ職業をもち続けたほうがよい<両立>は、1973年の調査では最も少なかったのですが、2003(平成15)年の調査では半数弱と増えました。これは男女とも、同じ傾向がみられます。女性は52%、男性は45%となっています。また、世代別にみてみますと、さらに変化がみられます。30代前半が<両立>と答えた割合は、1973年調査では女性28%、男性17%であるのに対して、2003年調査では男女ともに6割近い結果が出ています。

この<両立>と答えた変化を生まれ年が同じ世代で追いかけてみますと、1973年調査当時の女性の30代前半は28%で、この世代が2003年(60代前半)になると49%にまで増加しています。同じように、1973年調査当時の男性の30代前半は17%で、この世代が2003年(60代前半)になると45%にまで増加しています。これは、この世代だけの変化ではなく、他の世代でも同じように<両立>が経年とともに大きく増加しています。つまり、意識変化が世代交代だけでなく、時の流れとともに大きく変化したのが分かります。

 

意識は変わったが、現実にはハードルがある

このように、「男は仕事、女は家庭」といった「女性の就労や男性の家事・地域活動等の選択をしにくくしている」と考えられる意識の面は、大きく変化しています。

しかし、<両立>を実現するとなると、現実には、様々なハードルがあります。日本の社会も男女共同参画社会の実現に向けて、国や自治体が取り組みを始めた段階と言えましょう。

こうのけい

1950(昭和25)年生まれ。NHK入社後、編成局等を経て現職。「日本人の意識」調査などを担当。国の政策の理解度に関する調査委員。専門は世論調査。

 

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