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Net de コラム Vol.33

広聴開発途上国

  • 土橋 幸男
    PRコンサルタント

広聴は“ないないづくし”

私は最近、広聴に関する本を著した。その取材の途上、いろいろな課題を散見した。それは開発途上国に見られる現象のようでもあった。つまり、インフラ(施策)が十分に整備されていないのである。

広報と広聴は車の両輪といわれる。しかし実態はいびつで、動く度にガタピシと音がする。その理由は歴史と関心の濃淡にある。広聴は広報に比べて歴史は浅く、関心も薄い。その上、予算も少ない。“ないないづくし”である。

しかし、今は違う。パートナーシップ型行政の到来とともに住民の声を聴取する広聴活動が重視され始めた。省庁を始め全国自治体の積極さはそれを物語っている。大変喜ばしい限りだが、未整備ゆえに生ずる課題もある。

 

広聴は専任部署だけの仕事ではない

まず課題の一つは、広聴傍観者の存在である。周知の通り、広聴活動の成否は行政と住民との信頼関係に依存する。信頼は日ごろの住民とのコミュニケーションから生まれる。何気ない言葉遣いが人の心を傷つけたり、和らげたりする。一方、広聴に対する意識も重要だ。“心ここにあらざれば視(み)れども見えず、聴けども聞こえず”である。広聴は専任部署だけの仕事ではない。傍観者といえども職員である。“獅子身中の虫”であっては困る。全職員がかかわることによって、効果が高まることを知ってほしい。

課題の二つ目はレスポンス。つまり広聴への対応である。“自分の提言はどうなったのか”“意見はどうなったのか”。提言者であればだれしも気になることである。“聞きぱなっし”は最も悪い対応である。最近では自治体のHP(ホームページ)で提言への対応状況を公表しているところもあるが、その数は少ない。多くの自治体で導入されることを願うが、併せてIT弱者への公表手法も忘れないでほしい。

 

柔軟な広聴も時には必要

最後の課題はアンチテーゼともとれるが、広聴への柔軟性である。各自治体の広聴の実態をみると、できるだけ多くの住民から聴こうという姿勢を感ずる。広聴担当者であれば当然であるが、そのことが対応粗略の原因になっては無意味である。量より質の時代である。できるところから聴取する柔軟な広聴も時には必要だ。それが広聴先進国のゆとりといえよう。

どばしゆきお

1935 (昭和10)年生まれ。日本放送協会(NHK)、電通PRセンターを経て現職に。

 

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