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環境マネジメントと法律と広報

  • 縣 幸雄
    大妻女子大学教授

広報活動としての環境マネジメント

環境マネジメントとは、事業体が環境保全に関する取り組みを進めるにあたり、環境保全に関する方針や目標等を自ら設定し、それに向け取り組むシステムを構築することをいう(国際的な環境マネジメントシステム規格であるISO14001の認証取得などがその例である)。

事業体が、この環境マネジメントを行う法的な根拠は、環境基本法8条4項「国又は地方公共団体が実施する環境の保全に関する施策に協力する」責務があるということにあるが、この法律による義務付けをまつまでもなく、事業体は社会的責務としてそれを進んで行うべきものと考えられている。

環境の保全に配慮せずに自然を破壊し、利益のみを追求するような事業体は、社会から非難・糾弾され、その存続は不可能となっている。この意味で、環境マネジメントの構築は、その事業体が環境に配慮した事業活動を行っていると評価を受けるための不可欠な施策であり、ソーシャルリレーションズ(社会関係づくり)としての広報活動の意義を有するものであるといえる。

 

公益通報者保護法と広報活動

2006年、公益通報者保護法が制定され、自動車のリコール隠し、偽装請負、食品偽装、賞味期限変造など、内部告発による事業体の不正を明るみに出す契機となった。この法律が規定する通報制度を、環境マネジメントに組み込むこと、つまり、内部監査に導入して再構築することが広報活動として必要であると考える。

かつては、通報は「告げ口」「密告」というマイナスイメージでとらえられてきたが、通報が、第1に「うらみ」や「ねたみ」ではなく公益を目的とした告発の正当性、第2に「うわさ話」などではなく資料が存在する真実性、第3に内部通報では証拠隠滅のおそれがあるため外部に告発する相当性がある場合には、それは正当な行為として認められるとするのが同法の趣旨である。

事業体が、この第1と第2の条件をみたした内部告発を勧奨し、「変なことがあれば言ってほしい」とすることは、事業体が環境保全につきコンプライアンスに徹するというメッセージを内外に発信したということであり、この環境マネジメントの形成は、ソーシャルリレーションズを形成する上で、大きな効果がある広報活動になると考える。

 

あがた ゆきお
1939年生まれ。大妻女子大学文学部コミュニケーション文化学科教授。「広報広聴論」「日本国憲法」「法学」を担当。著書に『その広報に関係する法律はこれです!』など。

 

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