全国広報広聴研究大会
第63回 全国広報広聴研究大会
(愛媛県西予市 2026年(令和8年)開催)
公開日 : 2026年8月17日
実施報告
開会式
開会式では、主催者を代表して、日本広報協会の嶋津昭会長が挨拶。嶋津会長は、愛媛県を流れる肱川の治水対策に尽力した地元の政治家、西田司氏の功績に触れ、「西田さんが取り組んだのはハードな対策だが、現在はそれと併せ、ソフトな対策が求められており、自治体による広報活動もその一つ」と指摘しました。そして、「その取り組みには際限がなく、終わりがない。残念ながら被害が生じてしまうこともあるが、広報活動によって、その被害をできだけ少なくすることもできる」と語り、防災・減災に向けた広報の重要性を訴えました。
続いて、開催地を代表して、愛媛県の西山隆彦 企画振興部政策企画局長と、西予市の管家一夫市長が挨拶。西山局長は「災害に直面した自治体の知見や課題を共有できる貴重な機会。意見交換や議論を重ねることで、今後の広報活動の質をさらに高めていただければ」と語りました。管家市長も、「広報担当者が発する一言が、時には避難を後押しし、時には被災者の不安をやわらげるなど、文字どおり、命を守ることにつながる。参加者が互いに刺激し合い、新たな知見を持ち帰っていただければ」と話し、それぞれ、大会の成果に期待を寄せました。
嶋津昭 日本広報協会会長
西山隆彦 愛媛県企画振興部政策企画局長
管家一夫 西予市長
表彰式
開会式に続き、「令和8年全国広報コンクール」の表彰式が行われました。全国広報コンクールは、地方自治体等の広報活動の向上を図るため、各種広報作品について審査を行い、優秀作品を表彰しています。令和8年全国広報コンクールは、5媒体10部門の参加作品422点について、今年2月から4月にかけて各部門別審査会および総合審査会を行い、特選10点、入選92点(佳作含む)を決定しました。
特選受賞団体の中から、企画部門で特選となった岐阜県飛騨市に、内閣総理大臣賞が贈られました。

各部門特選団体には総務大臣賞が、各部門入選団体には日本広報協会会長賞が、それぞれ贈られました。

また、地域の課題やニュース、人物等を積極的に取り上げ、住民の視点を生かした、特に優れている作品(各部門1作品)には読売新聞社賞が、地域の魅力やその地方ならではのニュースなど「地域の活性化や課題解決のヒント」となる4作品に、BSよしもと賞が贈られました。
事例発表
群馬県千代田町「自分が好きなことを特集テーマに」
特選団体による事例発表では、広報紙町村部で特選を受賞した群馬県千代田町総合政策課の金井雅典さんが登壇。「広報ちよだ作成について〜小さい町・担当者1人なので、自分の好きなもので勝負!」と題して報告しました。

「担当になった当初はプレッシャーでいっぱいで、作っている自分も楽しくなかった」と振り返ります。「私が面白いと思えないものを誰が読んでくれるんだろう」と考え、方針転換。一人で担当しているからこそ、「個人的に好きなことや自分が知りたいこと」を特集してみることにしました。
大学時代、家庭科を専攻していた金井さんが取り組んだテーマは給食。2025年8月号の特集「おいしい学校給食、笑顔の理由」では、給食の時間を楽しむ子どもたちのほか、給食に素材を提供する農家やそれらを調理する給食センターなど学校給食に携わる人たちの思いを伝えながら、〝笑顔の理由〞を探りました。
特集を通じて「千代田町の給食には、食で子どもたちを育てる温かい物語があった」と語る金井さん。「こうした、このまちの素晴らしさを伝え、人々の誇りにつなげていくのが、広報としての私の願い」と締めくくりました。
岐阜県飛騨市「関係人口を通じて市民が住み続けたいと思うまちを」
広報企画部門で特選を受賞した岐阜県飛騨市総合政策課の上田昌子さんと、ふるさと応援課の堀辺洸介さんが、「人口減少時代の挑戦! 住民とファンでめざす持続可能なまちづくり〜合言葉は うれしい・楽しい・面白い!」をテーマに報告しました。

全国平均を上回るスピードで人口減少が進む市の状況に対し、減っていく市民と地域外の人との交流に焦点を当てた「関係人口」プロジェクトを実施。地域に多様に関わる人たちに積極的にアプローチしています。
関係人口の創出に向けて、民間企業や研究機関と連携。全国を対象にしたアンケートなど分析や実践を繰り返しながら、人々が地域に愛着を感じるための取り組みを展開。「飛騨市ファンクラブ」や、地域内外の人がつながる参加型プログラム「ヒダスケ!」などを通じて、交流機会を増やしてきました。
「最終的な目標は、関係人口の数を増やすことではなく、市民の皆さんが住み続けたい、地域に愛着があるという人を増やしていくこと。市民や参加者のリアルな声を聞き、実践と検証を繰り返しながら、これからも丁寧に事業を推進していきたい」(上田さん)と抱負を述べました。
基調事例発表「被災地取材と災害広報の課題」
| 発表者 | 合同会社LOCUS BRiDGE 愛媛デザインLab 堀内智代さん(元・西予市広報担当) |
| 市民ゲスト | 兵頭竜さん、山口聡子さん |

西予市の元広報担当者で、現在、合同会社LOCUS BRiDGE 愛媛デザインLabで活動する堀内智代さんが、西予市を襲った2018年の西日本豪雨災害の被害状況を説明し、取材活動で感じたことなどを語りました。また、実際に被災した市民の兵頭竜さんと、復旧復興支援に当たった山口聡子さんも登壇し、当時のことを振り返りました。
災害対応の業務を終えてから被災現場に入った堀内さん。そこで被災者から、勝手に敷地に入って写真を撮るマスコミへの不満の声を聞き、「カメラを持って取材に来た自分はどうしていいか分からなくなった」と言います。「私には何ができるだろう」と思い、被災者と一緒に泥かきなどをしました。
そこに、「広報で写真は撮らないの?いっぱい撮ってよ」と声をかけてくれたのが兵頭さんで、「過去に経験がない災害。これからどうしようと思っていた時に、いろいろな人が手伝ってくれて助かった。一人では何もできない。多くの人に知ってほしいという思いで声をかけた」。
山口さんも活動中に、マスコミ取材で、コメントを求められたり、質問攻めにあったりして不満を感じていました。山口さんの声を代弁してくれたのが、堀内さんが取材した「広報せいよ」の記事で、いろいろな人に「この広報紙に私の思いが書かれているから読んでほしい」と伝えました。
広報担当として「伝えなければ」という思いと、被災者への配慮で、葛藤があった堀内さん。それを象徴しているのが被災後に発行した「広報せいよ」2018年8月号の表紙で、兵頭さんが「(表紙に写っている)肥料袋は丈夫で、この写真のおかげで袋が集まり、その後の復旧作業で大いに役立った」と語れば、山口さんも「被災者の言葉にできない思いを伝えている。大変なときも、うれしいときも、広報紙は市民同士がつながることができる、よいツール。(会場の)皆さんも日々の活動を頑張ってほしい」と参加者にエールを送りました。

画像作成:山脇英明さん(東京都中野区)
パネルディスカッション「災害広報の記録・記憶を後世に」
| パネリスト | 合同会社LOCUS BRiDGE 愛媛デザインLab 堀内智代さん(元・西予市広報担当) 石川県戦略広報課 笹本幸治さん 三重県紀宝町教育課 竹鼻康さん(元広報担当) |
| 司会 | 公益社団法人日本広報協会 藤本勝也 |
| アシスタント | 公益社団法人日本広報協会 鈴木克典 |
パネリストの竹鼻さん(左)と笹本さん

基調事例発表をした堀内智代さん、石川県戦略広報課の笹本幸治さん、三重県紀宝町教育課の竹鼻康さんが登壇。2024年の能登半島地震や2011年の紀伊半島大水害に関して、それぞれの被災状況を報告しながら、報道対応や、広報紙、インターネット等による発信など、広報での取り組みを紹介しました。
被災者への取材に関して、石川県では市町村や地元の学生などに協力してもらい、多くの被災者や支援者にインタビューし、ネットで記事や動画を公開しています。笹本さんは「直接聞く生の声はたいへん貴重で、財産になっている。インタビューでは話を聞くことに徹するという姿勢で臨んだ。聞き終えると、つかえていたことを話せてよかったと話す方もいた」と言います。紀宝町の竹鼻さんも「住民へのインタビューは、広報として、後世につなぐことを第一に考えて取材した。生活が大変なときに取材なんて最初は怒られるかと思ったが、聞いてくれてありがとう、と感謝されることが多かった」と振り返ります。
広報取材について関心が集まったのが写真撮影で、竹鼻さんは「被災前や被災後の写真を庁内外から求められることが多く、日頃から撮るか、被災後も状況はすぐに変化してしまうので、とにかく撮っておくことが大事ということを、後から痛感した」と言います。笹本さんからは「ドライブレコーダーで能登半島を回って撮影したのが役立った。平常時に撮っておくことをおすすめする」という提案もありました。
写真撮影等の記録に関して、事例として紹介された熊本県菊池市では、災害対策本部の方針として、撮影することで記録を残すという役割が明確になっており、それが、いざという時の積極的な発信となり、ひいては住民の安心につながっていることが報告されました。
石川県では復興支援として、風化防止や応援消費を促す目的で、デジタルアーカイブや特設サイトを開設して発信。広報活動のポイントをまとめた「災害広報で迷わないための15のヒント」を公開しており、笹本さんは「当時起きたことを経験として伝えていきたい」と語りました。
紀宝町・竹鼻さんは、「情報はやはり生もの。相手が欲している時ほど伝える効果は大きい。それには日頃からの信頼関係が大切で、普段から広報紙を手に取ってもらえるように日々の発信を大切にしたい」と結びました。
元西予市広報担当の堀内さんも、「災害は非日常だが、日常の延長に非日常があるわけで、日常の発信が非日常時の発信につながる。日常から魅力ある発信を行うことが、非日常でも役に立つ」と強調しました。

画像作成:山脇英明さん(東京都中野区)
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