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『広報・広告・プロパガンダ』

広報・広告・プロパガンダ研究の歴史と課題を明確に示す

『広報・広告・プロパガンダ』
  (叢書 現代のメディアとジャーナリズム6)
  • 津金澤聡廣・佐藤卓己 責任編集
  • 出版:ミネルヴァ書房
  • 発行:2003(平成15)年10月
  • 本体価格:3,500円
広報・広告・プロパガンダ 表紙

『広報・広告・プロパガンダ』が、「叢書 現代のメディアとジャーナリズム」 の一冊として出版された。書名が示しているように、広報・広告・プロパガンダ研究の歴史と現状を明らかにすることを目的としている。

本書はナチスドイツのプロパガンダ分析から、最新のカルチュラル・スタディーズに基づいた広告の分析まで、実に広範囲にわたって広報・広告等を分析している。どの章も広報担当者にとっては一読の価値があるものばかりであるが、特に必読と思われるのは第5章(現代日本の企業広報)と第6章(行政広報の変容と展望)であろう。そこでは、現代の国家、大企業、あるいは地方公共団体などが活発に展開している広報活動の今日的意義についての考察が行われているからである。以下、この章について簡単に紹介したい。

第5章では、現代の企業広報が企業戦略の中で果たす社会的・文化的役割について多角的に分析されている。現代の企業広報について、筆者は「広報部門はトップから近い距離にあり、かつそれなりのパワーが必要である。21世紀に入ってから広報部門をコーポレート・コミュニケーション本部と名前を変え、広報、IR、宣伝、社会貢献、リスク管理等の諸機能を統括する部門とする大企業が増加してきている」と述べ、「広報は今後チーフ・コミュニケーション・オフィサーのもとに、CC本部として企業倫理から情報の受発信まで、かなり広範な守備範囲をカバーしていくことになると考えられる」と展望する。

「時代は企業がその活動の軸をますます社会へ移していかざるをえない方向へ向かうであろう。広報はそのスタンスを社会に移し、つねに社会の動きをウォッチし、これを企業戦略に反映させていくことが要求されてくる」と筆者は言う。

企業広報の社内での位置づけ、企業広報の方向性などの考察は、行政広報を展開していくうえでも参考になるであろう。なお、第5章の筆者である猪狩誠也氏は、当協会の広報アドバイザーである。

第6章では、これまでの行政広報理論の史的展開を手がかりに、主に自治体広報広聴の現状と課題について、その政策形成への方途と地域の主体性を確立するための方向性が示されている。筆者は、「パブリック・リレーションズ(PR)とは、現在までイコール『広報』 という誤った理解のまま推移しているが、本来は行政と住民の良好な『関係』の構築がその目的であり、GHQの通達にある『県民ノ自由ナ意志ヲ発表サセル』ことがその原点にある」と述べた上で、広報広聴の一体化を訴える。

そして、地域の主体を確立するために、(1)住民の意思を正確に捉え、行政評価に反映させていく、(2)住民の声を「政策形成」に活用する手法とルールの開発、(3)広報広聴の革新から職員の意識改革への三つの課題に取り組むことを提案している。そして、「コミュニケーションによる相互作用の中から『地域の個性と主体』を育んでゆくのが行政職員の使命であり、広報広聴の担当者はまさに、そのフロンティアに立つ役割を担う。新たな変革の時代を迎える今、改めて使命の再確認から明日への展望を拓くべきであろう」と締めくくっている。

広報担当者一人一人が広報とは何のためにあるのか、本書を読んで改めて考えみてほしい。

 

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