自治体広報トピックス
オリジナルフォントで まちへの愛着と誇りを高める
行方市
公開日 : 2026年5月13日
茨城県行方市は2025年度から、市のオリジナルフォント(書体)を制定する「行方市フォントプロジェクト」を展開しています。フォントメーカーの協力を得て市職員や小学生のワークショップを開催し、中学生による投票を経て昨年9月に「行方市フォント」を決定。広報紙など各種印刷物やノベルティなどへの使用から活用を始めています。市は、行方市フォントの制定や活用を通じて、地域への愛着や誇りを高めるための地域ブランディングに取り組んでいます。
行方市ならではの継続的な取り組みとして
行方市は、フォントメーカーの株式会社モリサワと2021年に連携協定を締結し、UD(ユニバーサルデザイン)フォントの活用や「伝わる」資料作りを目的とした職員研修などを通じて「情報のユニバーサルデザイン化」に取り組んできました。情報発信の次のステップとして、市制施行20周年を迎えた2025年から取り組んでいるのが行方市フォントプロジェクトです。企業や団体の活動において一貫した印象を保持するために管理・運用される「制定フォント」を選定することで、市の発信力を高めるだけでなく、市民によるまちへの愛着や誇りをより高めていくことを目指しています。
「20周年を迎えるにあたり、将来にわたって使い続けられる施策を実施したいと考えました」と語るのは、魅力発信課シティプロモーショングループの藤田彩海さんです。自治体では周年企画として記念グッズやロゴの制定といった施策が多く見られます。行方市でも過去に周年記念のロゴを制定していますが、一過性の取り組みで終わっていました。
「そこで考えたのがフォントで、同社との連携により、オリジナルのフォントを一貫して使用する制定フォントに取り組みました。これにより、行方市ならではの魅力を継続して、発信していくことができると考えました」(藤田さん)
職員や小中学生参加による意見交換や投票で決定
プロジェクトで最初に行ったのが、2025年7月の「職員向けワークショップ」。チラシなどを題材に優先順位を考えた情報の伝え方を学んだほか、モリサワが手掛けるUDフォントを例に、各フォントの特性について理解を深めました。さらに、行方市の特長や便益・不便な点について意見を出し合いながら、「行方市らしさ」を言葉で表現するなど言語化。ステークホルダーを設定した上で、「どこでフォントと出会うのか」「フォントの印象が行動や判断にどう影響するのか」などを考えながら、制定フォントの候補を選びました。
翌月に開催された「小学生向けワークショップ」では、学校の教科書や漫画の題字、ゲーム機などに同社のフォントが使われていることなどを学びながらフォントについて学習。また、行方市を人物に例え、その人はどのような声をしているのか、イメージをフォントで考えてみました。さらに、そこで選んだフォントを使って行方市を紹介するポストカードを制作しました。
職員向け、小学生向けワークショップを経て候補となった四つの制定フォントをもとに、最後は、中学生による投票を実施。決定した制定フォントは、同年9月28日に開催された20周年記念式典で発表されました。
「地域ブランディングの一環として、『行方市らしさ』を考えるきっかけになればと行ったワークショップですが、まちに対してポジティブな意見だけではなく、ネガティブな意見も出され、それによって行方市を多面的に捉えることができました。また、市民の皆さんと一緒に『行方市らしさ』を考えることができ、特に『未来の市民代表』でもある小中学生に選んでもらったことは大きな価値があると考えています」(同)
まちのことを考え 故郷に思いをはせるきっかけに
こうして決定した行方市フォントは、モリサワが提供する「解ミン宙そら」というフォントがベースになっています。明朝体の端麗な表情や隷書のハネ、ハライ、点画の特徴などが織り交ざったデザイン書体で、本文や見出し、タイトルなどに幅広く活用されています。 さらに、今年3月には、通常の行方市フォントのうち「行方市」などの特定の文字列をカスタマイズ(独自に変更)した「行方市ロゴフォント」を発表しました。
具体的には、文字の一部を「(行方市の西側に位置する霞ケ浦と関わりの深い)帆引き船の帆を連想させる形状」に変更したほか、「方」や「市」の字の上部にある点の部分を「霞ケ浦の水」や「湖面を船が走った後のしぶき」をイメージした形状にデザイン。また、ローマ字「NAMEGATA」の中の「M」を「筑波山を連想させる形状」に変更しました。
行方市フォントと、カスタマイズした行方市ロゴフォントは、行方市の制定書体として、市の発行物(市報や市勢要覧など)、ノベルティなどで使用するほか、市章と組み合わせたデザインや、会見時の背景幕などで活用していく予定です。
行方市フォントに込められた「行方市らしさ」は、「自然と調和するまち/自然の豊かさと共存するまち」。
「『解ミン 宙』は広く普及している書体なので、例えば街中や書物の中で目にしたときに、行方市を感じてもらうことができます。また、子どもたちは進学や就職などで行方市を離れることがあると思いますが、そんなときにこのフォントを見かけると、ふと、地元のことを思い起こしてくれるのではないでしょうか。このように、今後も市民の皆さんの思いと一緒に、行方市フォントを育てていければと考えています」(同)
月刊誌「広報」2026年5月号掲載