自治体広報トピックス
9割がSNSの利用は「言葉に影響がある」と回答〜令和6年度「国語に関する世論調査」
文化庁
公開日 : 2025年12月24日
文化庁が実施した令和6年度「国語に関する世論調査」で、SNSの利用に関し、「SNSの普及によって、社会で使われる文字や語句、また、社会における言葉の使い方に影響があると思うか」を聞いたところ、「大きな影響があると思う」と「多少影響があると思う」を合わせた「影響があると思う」は89.3%で、9割近くが、SNSの利用により「言葉に影響がある」と考えていることが分かりました。
「国語に関する世論調査」は、日本人の国語に関する意識や理解の現状について調査し、国語施策の立案に役立てるとともに、国民の国語に関する興味・関心を喚起するのが目的です。令和6年度調査は、全国の16歳以上の個人6千人を対象に、2025年1月から3月にかけて郵送法により実施。有効回収数は3,498人で回収率は58.3%でした。調査項目は、「言葉の使い方」「SNSとコミュニケーション」「敬語」「外来語の表記」「慣用句等の意味」の五つ。
不特定多数への投稿は「交流」が利点
SNSの利用に関して、「あなたはふだん、スマートフォンやパソコンなどでSNSを利用していますか」の質問に対し、「利用している」は74.8%で、「利用していない」は24.9%でした。これを年齢別にみると、「利用している」は年齢が上がるにつれて割合が低くなり、40代以下で9割台、50代で8割台、60代で約7割、70歳以上で約4割でした。
また、「利用している」と答えた人に「不特定多数に向けた、SNSのコメントや投稿等を行っているか」を聞いたところ、「行っている」22.2%、「行っていない」76.1%で、7割以上が「行っていない」ことが分かりました。年齢別では、「行っている」が20代で他の年齢層より高く、60歳以上で他の年齢層より低くなっています。
不特定多数に向けて「行っている」と答えた人に、「SNSで、誰でも見られるような不特定多数に向けたコメントや投稿等を行うことに、どのような利点を感じているか」を複数回答で聞いたところ、「趣味や価値観が似ている人たちと交流しやすい」が最も高く63.5%でした。次いで多かったのは「写真や動画などと合わせてやり取りできる」44.4%、「自分の考えや感情を伝えやすい」43.7%、「ふだん知り合う機会のない人と交流できる」39.9%、「都合のいい時間にやり取りできる」38.6%、「気軽にやり取りできる」38.4%、「直接会えない知人と交流を深められる」37.5%の順でした。
また、不特定多数に向けて「行っている」と答えた人に「SNSで、誰でも見られるような不特定多数に向けたコメントや投稿等を行うことに、どのような戸惑いを感じているか」を複数回答で聞いたところ、「情報が本当かどうか判断しにくい」が最も高く51.1%でした。次いで、「やり取りが面倒に感じることがある」28.2%、「相手の考えや感情が分かりにくい」26.9%、「目にする情報に断片的なものが多い」26.5%、「自分のうわさや個人情報が広まらないか心配になる」25.6%の順でした。
新しい言葉が増えたり短い言葉でのやりとりが増えたり…
「SNSの普及によって、社会で使われる文字や語句、また、社会における言葉の使い方に影響があると思うか」を聞いたところ、「大きな影響があると思う」は37.8%、「多少影響があると思う」は51.5%。この二つを合わせた「影響があると思う」は89.3%で、9割近くが「影響がある」と答えました。一方、「まったく影響はないと思う」は0.6%、「あまり影響はないと思う」は8.5%で、二つを合わせた「影響はないと思う」は9.1%でした。これらを年齢別にみると、「大きな影響があると思う」の割合は70歳以上で他の年齢層より低くなっています。
前記の質問で「影響があると思う」人に「社会で使われる文字や語句にどのような影響があるか」を聞いたところ、「略語が増える」が最も高く80.1%でした。次いで、「言葉の新しい使い方や新しい言葉が増える」76.9%、「仲間内だけで通じる言葉が増える」45.1%、「絵文字等の使用が増える」35.9%の順でした。
さらに、前記の質問で「影響があると思う」人に「社会における言葉の使い方にどのような影響があるか」を聞いたところ、「短い言葉でのやり取りが増える」が最も高く73.1%でした。次いで、「十分に吟味されないまま使われる言葉が増える」67.2%、「世代間の言葉の使い方の違いが大きくなる」64.4%、「相手への思いやりに欠けた言葉づかいが増える」48.9%、「年齢や立場などを気にしない言葉づかいが増える」43.2%、「書くときも話し言葉のような言葉づかいが増える」42.1%となりました。
これを年齢別にみると、「世代間の言葉の使い方の違いが大きくなる」「書くときも話し言葉のような言葉づかいが増える」を選択した人の割合は、16〜19歳で他の年齢層より高くなっています。また、「相手への思いやりに欠けた言葉づかいが増える」は20代で他の年齢層より低く、「年齢や立場などを気にしない言葉づかいが増える」は、年齢が上がるに従って割合が高くなる傾向となりました。
また、SNS におけるコミュニケーションが社会にさまざまな影響を及ぼしているという指摘に関し、「SNSによるコミュニケーションの質を社会全体で高めていく上で、どのような課題があるか」を聞いたところ、「正確かどうか疑わしい情報がよく見られる」が最も高く71.0%でした。次いで、「人を傷つけたり挑発したりするような言葉がよく使われている」62.7%、「相手の立場を考えないやり取りがよく行われている」57.3%、「情報や意見に対する過剰な反応がよく見られる」56.2%、「深く考えずに発信された情報がよく見られる」55.3%、「誤解を招くような言葉がよく使われている」49.3%、「考えの異なる相手への失礼な言葉づかいがよく見られる」47.8%となっています。
さらに、「あなたがSNSを利用するとしたら、そこでのコミュニケーションの質を高めるために、あなた自身はどのような点に気を付けたいか」を聞いたところ、「人を傷つけたり挑発したりするような言葉を使わない」が最も高く75.7%でした。次いで、「誤解を招くような言葉を使わない」67.3%、「発信する前に十分に内容を吟味する」62.9%、「受け取った情報が正確かどうか確認する」60 .6%、「相手の立場に立ってやり取りする」58.9%の順でした。
敬語が必要なのは「相手を尊敬する気持ちが表せる」から
敬語の必要性について、「今後とも敬語は必要だと思うか」を聞いたところ、「必要だと思う」が61.6%、「ある程度必要だと思う」が33.2%で、この二つを合わせた「必要だと思う」は94.9%でした。「必要だとは思わない」は0.2%、「あまり必要だとは思わない」は1.7%で、この二つを合わせた「必要だとは思わない」は1.9%でした。
敬語が必要だと思う理由について聞いたところ、「相手を尊敬する気持ちを表せるから」が最も高く、73.2%でした。次いで「表現がやわらかく、人間関係を円滑にすることができるから」59.3%、「相手と自分の立場をはっきりとさせてけじめを付けることができるから」40.2%でした。
月刊誌「広報」2025年12月号掲載