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石原信雄の時代を読む Vol.9

民主党政治から見えてきたこと

官僚依存型政治からの脱却

あけましておめでとうございます。

昨年の9月16日に鳩山内閣が誕生し、すでに100日以上が過ぎました。第45回衆議院議員総選挙において、308議席を獲得するという民主党の圧勝を受けて成立した鳩山政権の下で、与党・民主党は政治の在り方、行政の進め方の大きな方向転換を進めつつあります。それは政治主導の政治であり、別の言葉で言えば官僚依存型政治からの脱却であります。

その具体的な手法として、まず新内閣の政策の基本的な方向づけ、予算編成方針、予算の重点、その他、重要な案件については新設の国家戦略局が担当することになりました。国家戦略局を担当する国務大臣として菅直人副総理が就任しましたが、国家戦略局設置のための法令が制定されていないため、当面は法律改正を待たずに国家戦略室として活動を開始しております。

一方、鳩山政権は、これまでの事務事業全般を根本的に見直し、無駄を徹底的に排除することによって、民主党がマニフェストで約束した子ども手当の創設、高等学校までの授業料の実質無料化、あるいは農家の戸別所得補償、有料道路の無料化などの財源に充てようとしています。

そして、事務事業全般を検討する場として、これも新設の行政刷新会議が事業仕分けを行ったことは皆さんの記憶に新しいところだと思います。事業仕分けでは民間人を交えて、各行政分野にわたる事業の実態、予算の当否その他を公開の場で議論をして、事業を廃止するか削減するか存続するかの方向づけを行いました。

 

政府は日本が進むべき道筋を明らかにすべき

これらの政治手法については、多くの国民が支持しているものと考えられます。しかし、予算編成の過程では、昨今の経済不況からくる税収の大幅な落ち込みもあって、全体としての財源の確保に苦慮しております。また、その財源不足を補うための国債の発行額については、前年度の補正予算の段階での発行額である44兆円を一つの目途として編成作業が行われましたが、より多くの財源をいわゆる霞が関埋蔵金の発掘などによって賄うこととしています。

問題はこの埋蔵金の実態が、必ずしも明確になっていないということです。このような埋蔵金の処理が、将来の行政執行や財政の健全性にどのような影響を与え得るのかが、必ずしも明らかになっていないのです。そして何より気になるのは、「行政サービスに要する経費は国民が負担する税金によって賄う」という、財政の健全性の基本原則である筋道が必ずしも明確にされていないことでしょう。

平成22年度予算における財源不足は、公債の大量発行と埋蔵金の活用によって賄われることになりますが、これは将来を展望した税負担のあり方について明確な方向付けがなされていないということでもあります。また当面の雇用不安に対する最小限度の手当てはなされていますが、将来にわたって雇用を確保するために必要な経済の成長戦略が、必ずしも明確に示されていないということも指摘しておかなければなりません。

 

問われつつある総理の指導力

一方、国の安全保障にかかわる問題については、多年の懸案であった普天間の米軍基地移設問題についての結論が先送りされ、日米関係の将来に不安を残しております。

また、予算編成や重要な政策決定の過程で、社民党や国民新党の主張が大きく影響を及ぼしたことも一つの不安材料でしょう。鳩山内閣は連立政権ですから、連立を組んでいる社民党や国民新党の意見を聞くことは当然とはいえ、民主党としての基本的な戦略というものが、その具体化の過程で少数の連立2党によってかなりぶれを見せていることも事実です。

そしてこのような結果、鳩山総理大臣の政策決定における指導力について不安を抱く人が増えているということも、憂慮すべきであろうと思います。

いずれにしても、我が国の政治は民主党政権の誕生によって大きく転換することになりました。願わくはこの新しい政治の流れというものが、真に国民にとって望ましいものになることを祈ってやみません。

 

2010(平成22)年1月掲載

 

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