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石原信雄の時代を読む Vol.12

平成23年の日本に望むこと

我が国の経済は欧米依存型から新興国との関係強化へ

平成23年が明けました。おめでたいはずのこの時期ですが、これからの日本はどうなるのかと、不安な気持ちで新年を迎えられた方も多いのではないでしょうか。

まず、国民にとって最も切実な関心事である経済情勢と雇用問題がどのような展開になるのか。これについてマスコミやエコノミストは、いずれも前年以上の厳しい状況を予測しています。アメリカ経済の本格的な回復はまだまだのようでありますし、ヨーロッパにおいては財政不安を抱える国が依然として絶えません。

こうした中で中国やインドの成長・発展が期待されています。必然的に我が国の経済状況は、従来の欧米依存型から中国をはじめとする新興国との関係強化に向かっていくことになりましょう。そのためにも中国をはじめとする近隣諸国との関係改善が急がれます。

 

国民生活に直結した問題は与野党を超えて処理すべき

最近の経済状況に関する政府の対応は、率直なところ、国民の期待に十分応えているとは言いがたいものがあります。国内経済の動向を見ても、依然として厳しい状況が続きそうですので、いま一段の努力が望まれます。特に、新卒の大学生や高校生の就職率は前年以上に厳しくなるようですので、ここは政府の強力なテコ入れが大いに期待されるところです。

雇用関係を抜本的に改善するためには、何といっても国が日本経済の将来に向けた成長の可能性を示すことが大切です。政府は平成23年度予算を決定し、これから国会審議に臨むわけでありますが、衆参ねじれの国会状況の中では、この予算の執行の裏づけとなる関連法律案がどうなるのか、大きな不安が持たれています。

私は、国民生活に直結した予算や法律案は、与野党の対立を超えて処理してもらいたいと思っています。ねじれ国会の不安を解消するためにも、与党と野党の大胆な対話や妥協が望まれるところであります。

 

急がれる安全保障体制の強化・充実

一方、安全保障の面においては、先般の尖閣諸島沖における中国漁船と海上保安庁の警備艇の衝突事件とその後の処理、また朝鮮半島における南北の軍事衝突の問題が記憶に新しいところです。これらに対する我が国の対応ぶりはいかがなものだったでしょうか。いずれも我が国の安全を確保する上で、一抹の不安を感じざるを得ませんでした。

安全保障はまさに国の存立の基本であります。昨年の二つの事件では思い切った安全保障体制の強化・充実を図る必要性を痛感させられました。そのためにも、日米間の信頼関係の再構築が急がれるところです。普天間基地の移設問題をはじめ、日米間に生じた昨今の不信感を払拭すべく、必要な措置を早急に講じる必要があります。

 

友好親善に努める一方、安全保障面での備えを万全に

当然のことながら、隣国との友好親善関係は大切にしなければなりません。しかし、中国や北朝鮮の動向については、改めてその政治的な意図、軍事力の強化の実態といったものを明らかにして、我が国の基本的な戦略を再検討する必要があると思います。と同時に、安全保障面では常に最悪の事態に備えて、万全の備えをしておくことが必要となります。

このように、我が国はこれからも内外ともに厳しい状況が避けられそうにありません。そのためにも、早急な政府の体制の立て直しと、そのための大胆な決断が望まれます。

 

2011(平成23)年1月掲載

 

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