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Net de コラム Vol.41

広報に携わる人たちに求められる新たな役割

  • 井熊 均
    (株)日本総合研究所 執行役員 創発戦略センター所長

広報の意味は「広く知らしめること」である。単純にとらえるのなら、コマーシャルなどで商品やサービスをアピールすればいい。しかし、二つの観点で、広報は企業(団体)にとって単なる宣伝以上の意味を持つようになっている。

一つ目は、企業が公表する情報がコミットメントとしての性格を強くしていることだ。企業は、どんな商品をどのように提供するのか、を正確に伝えることが求められるようになっている。経営ポリシーに裏付けられない情報を流していると企業としての姿勢が問われることになる。情報の取り扱いを間違えることは企業価値の損失にもつながるのだ。

二つ目は、企業内での情報管理が厳しくなる一方で、社員が一般社会で入手できる情報の量が飛躍的に増大していることだ。一般情報によって自社の経営戦略や事業の情報を知ったり、モチベーションに影響が出たりすることも珍しくない。結果として、情報発信の巧拙によって企業の活力に差が出ることもあり得る。

このように、内に見ても外を見ても、広報活動は企業経営に密接に結びつくようになった。広報に携わる人たちにも新たな役割が求められている。

まず、基本として、自社が発信する情報がどのような影響を与えるのか、発信した情報が負の影響を与えた場合どのように対処するか、といったリスクマネジメントの素養を身につけなくてはいけない。同様に、どのような情報をどの方向に発信すれば企業としてプラスの効果が得られるか、という攻めのノウハウも身につけおきたい。

それを前提として重要になるのは、社内外の関係部門を結びつけるコーディネート能力だ。優れた広報は実態を伴った活動と表裏一体で展開されるものだ。その意味で、広報担当者はコンテンツを作る部門の人たちとの良好なコミュニケーションを作り上げておきたい。発信する情報の説得力が増すだけでなく、広報担当者の側からアドバイスが実務面で役に立つことも少なくなかろう。

いずれにせよ、広報担当者には企業戦略と密接にかかわる立場で、専門的な知見とフットワークが求められる時代になっている。

 

いくま ひとし
1958(昭和33)年生まれ。専門は、自治体IT政策、企業運営。著書に『PFI公共投資の新手法』『自治体破綻』ほか。

 

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