広報ライブラリー
『関係人口の時代「観光以上、定住未満」で地域とつながる』
公開日 : 2025年11月13日
著者:田中輝美
発行:中央公論新社(中公新書)
発行:2025年8月
価格:1,056円(税込み)
新しい主体としての「関係人口」を知るための入門書
著者は島根県の公立大学に所属する研究者。関係人口論などの講義を担当しているが、受講学生からは、「多くの人が関係人口は何か地域に貢献しなければいけないと感じて気が引けてしまう」など、とまどいの声が聞かれる。一方、関係人口と接する地方も、「関係人口が地域課題のために何をしてくれるのか」といったように地域貢献に注目が集まってしまう面もあるという。
著者はこれまでに、事例を中心とした『関係人口をつくる』(木楽舎)、博士論文をもとにした学術書『関係人口の社会学』(大阪大学出版会)の2冊を執筆。関係人口のさらなる広がりが予想される中で、「より読みやすい入門書が必要」と感じ、3冊目の本書執筆につながった。本書では、そうした関係人口の現状を踏まえ、全国各地の事例をもとに、実践に向けたヒントや課題などを挙げている。
全7章構成。序章では、「ファン」や「推し地元」「ワーケーション」「ボランティア」などとの違いを確認しながら、関係人口の輪郭を浮き彫りにしていく。
地域との出合い方などを紹介した3章「いかに地域と関わるか」では、「関係案内所」という機能や、友だちの地元に帰省する「超帰省」など、関係人口にとっての入り口の見つけ方を紹介。続く4章では、関係人口と協働して課題を解決したい地域住民向けに、関係人口との出会い方、協働の方法、継続していくための工夫を紹介。その上で、自治体の役割や政策化にも触れる。
本書を読むと、関係人口と地方の双方にとって、関係人口のあり方や考え方はもっと柔軟であり、さまざまな可能性を持った存在であることがよく分かる。
- 月刊誌「広報」2025年10月号掲載