自治体広報トピックス
「かるた」で見つけよう「無意識の思い込み」
広島県福山市
公開日 : 2026年4月16日
「イクメンが、すごいと言われる なんでじゃろ?」「ネットの情報 みんながゆっとる みんなって誰?」――。広島県福山市が制作した「無意識の思い込み発見かるた」には、日常にある、無意識によるさまざまな思い込みが、地元の方言などを交えて描かれています。日本の伝統的な遊びの一つである「かるた」を通じてそれらを知ることで、一人一人が違いを認め合う多様性社会の実現を目指して作成されました。かるたを使った学習会では、札をきっかけに意見交換します。市では、「かるたを通じて楽しみながら無意識の思い込みについて考えてみませんか」と、活用を呼び掛けています。
市民からの経験談や意見を札に反映
「アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み・偏見)」は、これまで培ってきた経験や育った環境、周囲の意見、日々接する情報などに影響を受けて自然に形成されます。
「このように、無意識の思い込みは誰にでもあるものですが、そこから生まれた『普通は〇〇だ』『どうせ〇〇には無理だ』などの言動が、知らず知らずのうちに相手を傷つけたり、相手や自分自身の可能性を狭めてしまったりすることがあります。まずは、こうした無意識の思い込みを知ることが大切ですが、ふだんの生活の中では、なかなか気づきにくいもの。そこで、子どもから高齢者まで、市民の誰もが楽しみながら、アンコンシャス・バイアスや人権について学ぶきっかけになればと、日本の伝統的な遊びでもある、かるたを取り入れた人権学習教材を制作しました」(多様性社会推進課)
かるたの制作に当たっては、ワークショップの開催やイベントでのアンケートなどにより、市民から経験談を募ったり意見を聞いたりして、それらを読み札や絵札の内容に反映させました。
かるたをきっかけに意見交換し理解を深め合う
かるたは、読み札と絵札の各44枚があり、読み札の裏には、それぞれの解説が掲載されています。市はそれらをセットで貸し出ししているほか、市サイトでは、読み札と絵札、解説が書かれたPDF ファイルや、使用方法などを紹介した解説書を公開。ダウンロードして活用できるようにしています。
かるたの使い方は主に4パターンあり、例えば「お楽しみ!かるた編」では、テーブルにかるたを広げ、司会が読み札を読んでかるた取りを行います。札を取った人は改めて絵札の文を読みます。すべての絵札を取り終わったら各自で手持ちの札の枚数を確認。手持ちの札から「自分にも同じ経験がある札」や「共感できる札」など1枚を選び、選んだ理由やエピソードを一人ずつ発表します。それを聞いた他の人は、あらかじめ用意された「あるあるカード」(同じような経験や同じような意見がある人)、「なるほどカード」(意見を聞いて改めて納得した人)を掲げるなどして自身の気持ちや考えを示すと同時に、さらに意見交換。その札についての意見が出尽くしたところで、札の趣旨について確認し、次の札に移りながら、グループ全員の札について意見交換をしていきます。
そのほか、かるたを楽しみながら札1枚ごとに参加者がその内容について意見交換する「かるたを使った話し合い編」、トランプのように参加者に絵札を配り、進行役が読み上げた札から参加者が意見交換する「カードゲーム編」、かるたの絵札を拡大したものを掲示し、広めの会場を使い大人数で意見交換する「パネル編」などがあります。
どの使い方も、44枚すべてを使う必要はなく、話し合いたいテーマや時間によって、使うかるたを選ぶことができます。テーマは「ジェンダー」「LGBTQ」「こども」「外国人」「障がい者」「高齢者」などに分かれており、札の中には「(さ)災害は 自分の近くで 起こらない?」、「(ね)ネットの情報 みんながゆっとる みんなって誰?」、「(え)SNS で知り合った友だち、ほんまに同級生?」、「(や)やりたいけど、やめとこう 失敗しそうじゃけえ」など、無意識の思い込みとは気づきにくいテーマもあります。
読み札の解説には、災害などの危険が迫っていても『自分は大丈夫』と過小評価してしまうことや、挑戦したいことがあっても失敗するのが怖いと考えてしまい、自分を過小評価し可能性を狭める思い込みがあることなどを紹介。暮らしのさまざまな分野に無意識の思い込みが潜んでいることや、そうした人間の特性をかるたを通して知ることができます。これら札の一覧も市サイトで公開されています。
昨年9月に開催された地域住民を対象としたかるたを使った学習会では、参加者から、「多くの気づきがあった」「無意識の思い込みを知ることで、住みやすいまちづくりにつながるのでは」などの声が聞かれました。
かるたのセットは、多様性社会推進課や、支所などにある各地域振興課で無料で貸し出しを行っています。貸し出しを希望する人は、市サイトのフォームから申請し、申し込みます。
月刊誌「広報」2026年3月号掲載