自治体広報トピックス
レポート「岩手広報会議/住民と向き合う広報の現在地」を開催〜自治体広報の本質を見つめ直す一日
合同会社LOCUSBRiDGE
公開日 : 2026年4月16日
2025年12月13日、岩手県奥州市の水沢グランドホテルで「岩手広報会議」が開かれ、約60人が来場。北は青森、南は鹿児島まで、全国各地から自治体広報に携わる職員や関係者が参加した。[取材:広報編集部 池田次郎]
自治体広報の第一線にいた二氏による「まちを変える広報とは」
第1部のテーマは「まちを変える広報とは何か」。登壇したのは、かつて自治体広報の第一線に立ってきた畠山浩氏と長野士郎氏。それぞれ全国広報コンクール内閣総理大臣賞を二度受賞している。
二人の出会いから話は始まり、かつて制作した広報紙をスライドに映しながら、どのように広報と向き合ってきたのかを振り返った。
長野氏は、2007年12月号『広報ふくち』の炭鉱を扱った特集「方城大非常」や、飲酒運転による重大事故の被害者を取材した経験を紹介した。重いテーマに向き合い、取材したありのままを伝える。その姿勢は、自治体広報が単なる行政情報の伝達に終わらない営みであることを物語っていた。
一方、畠山氏は『まちの総合情報誌Fujisawa』2009年2月号の特集「ギフト」を例に挙げ、白血病と闘い続けた家族を取り上げた経緯を語った。子どもを失った両親の葛藤や担当者の苦悩から、自治体広報が果たすべき役割の本質が垣間見られた。
畠山氏は、SNSやウェブが主流となった今も「紙をおろそかにしてはいけない」と強調する。大手新聞社の動向を見ても分かるように、紙媒体には依然として力がある。手元に直接届き、一覧性があり、保存されるという特性は、デジタルでは代替しきれない価値を持つ。
長野氏もまた、メディア環境が変化しても「自治体広報の本質は変わらない」と語った。取材を通じて住民を理解し、自らの言葉で伝える。その基本は、どの時代にも共通する。広報とは技術ではなく姿勢であるというメッセージが静かに広がった。
7人の広報担当者・経験者が自治体広報の未来を語る
第2部には、平成後期〜令和の自治体広報を牽引してきた担当者7人が登壇した。テーマは「各時代の代表者が語る未来」。広報ツールが多様化し、業務が増大する一方で、働き方改革が求められる中、担当者はどのように広報業務と向き合うべきかという問いから議論は始まった。
高橋利斗氏は、SNS対応など新たな業務が増える中で、広報に向き合う時間の確保が課題だと話す。佐久間智之氏は、紙やSNSだけでなく、学校通知や回覧板なども含め、「誰に届けるのか」を明確にしたターゲティングの重要性を指摘した。
林博司氏は、シティプロモーションの実践を通じて「広報紙こそ最も強力なツールだと感じている」と語り、紙の強みを改めて示した。美坂雅俊氏は、ウェブやSNSの社会では好きな情報しか見なくなる傾向があるからこそ、直接届ける紙媒体の意義はむしろ高まっているのではないかと提起した。
竹鼻康氏は、紙面を通じて住民と真剣に向き合うことにより得られる感動を次代の担当者にも伝えたいと語り、村田大地氏は、規模の小さな自治体ほど広報紙を軸にまちづくりを進められる可能性があると主張した。
秋葉恵実氏は、広報紙は市役所がまちとどう向き合うのかを映す鏡であり、常にその意識を持つべきだと結んだ。
岩手広報会議は、流行の手法を学ぶ場とはならなかった。取材を重ね、一次情報を得て、住民と向き合い続ける。その積み重ねが信頼を生み、まちを動かす。紙かデジタルかという二項対立を超え、自治体広報の本質に立ち返る一日となった。
「岩手広報会議」登壇者
〈第1部〉
畠山浩 氏(元岩手県一関市)
長野士郎 氏(福岡県福智町)
〈第2部〉
秋葉恵実 氏(埼玉県北本市)
竹鼻康 氏(三重県紀宝町)
佐久間智之 氏(元埼玉県三芳町/現 PRDESIGN JAPAN株式会社代表取締役)
美坂雅俊 氏(鹿児島県霧島市)
村田大地 氏(奈良県王寺町)
高橋利斗 氏(岩手県奥州市)
林博司 氏(元埼玉県北本市/現 合同会社LOCUS BRiDGE COO)
【進行】
第1部:黒瀬啓介(合同会社LOCUS BRiDGE 代表社員)
第2部(前半):池田次郎(合同会社LOCUS BRiDGE)
第2部(後半):鈴木克典(合同会社LOCUS BRiDGE)
- 「自治体広報LAB」ウェブサイト ※閲覧には会員登録(無料)が必要です。
月刊誌「広報」2026年3月号掲載